【金融機関のカスハラ対策】『「正当な苦情」と「不当要求」の境界線』について

「最近、お客様からの要求がエスカレートしている」「現場の窓口職員や渉外担当が疲弊している」――。
こうしたカスタマーハラスメント(カスハラ)や悪質クレームに関するご相談が銀行や信用金庫、
信用組合様から多く寄せられています。

特に地域密着を掲げる信用金庫様においては、「お客様第一」の姿勢が裏目に出てしまい、
どこまでが「真摯に対応すべき苦情」で、どこからが「毅然と拒絶すべき不当要求」なのか、
その境界線(線引き)に頭を悩ませているのが実情ではないでしょうか。

拙著『バンカーの叫び』でも描きましたが、この境界線が曖昧なままだと、
現場の職員だけでなく、組織全体に致命的なリスクをもたらすことになります。


■ 現場任せ(属人化)が生む、不当要求の「泥沼化」

多くの信用金庫の現場で起きている問題は、
クレーム対応の基準が「各営業店の支店長、次長などのマネジメント責任者の裁量」に
委ねられている、つまり”対応の属人化”です。

ある支店では「これ以上長引かせたくないから」と、理不尽な要求にも
頭を下げて要求を呑んでしまう。

しかし別の支店では突っぱねる。この「対応のばらつき」こそが、
クレーマーに「ゴネれば思い通りになる」という隙を与えてしまいます。

悪質な不当要求は、職員の「注意不足」や「スキルの優劣」で起きるものではありません。
既存のコラムでもお伝えしている通り、
「ミスやトラブルを拡大させるのは、人ではなく、組織の構造(仕組みの不在)」なのです。


■ 『バンカーの叫び』の現場から学ぶ、境界線を見極める「2つの軸」

では、どこに境界線を引けばよいのでしょうか。
判断基準は「お客様の感情の激しさ(怒鳴り声など)」ではありません。
見るべきは、以下の2つの軸です。

  1. 要求内容の正当性(当方に法的な非やミスがあるか、ルールを超えた無理な要求か)
  2. 要求手段の妥当性(大声、長時間の居座り、机を叩く、職員個人への脅迫などがあるか)

例えば、当方に事務手続きにミスがあったとしても、

「担当者をクビにしろ」
「土下座しろ!」

などの要求は、手段として完全に不当要求(カスハラ)の領域に入ります。

ミスの原因は「構造」として真摯に改善すべきですが、行き過ぎた要求に対しては、
現場の職員個人に謝罪を続けさせてはいけません。


■ 「組織型」のカスハラ対策

  • 同じ主張で長い時間、居座り続けた場合などは時間を切って(例えば1時間)お帰りいただく
  • モノ(例えばカルトン)を投げたり、不当な文言(「SNSに晒すぞ」、
    「お前の家を突き止める」など)が出た瞬間、対応を打ち切ってすぐ警察へ連絡する

こうした具体的なマニュアルを策定(本部、支店のどこも同じ対応⇒これが大事)し、
組織全体で統一した対応をとることで、初めて現場の職員は安心して、本来の地域密着の
営業活動に専念できるようになります。


ヒューマン・ビジネス・パートナーズでは、約30年のメガバンクでの実務経験と、
数々のトラブル解決の実績(『バンカーの叫び』に収録)をベースに、
金融機関様に特化したクレーム対応マニュアルの策定支援や、組織体制の診断を
行っております。

「今あるマニュアルに実効性があるか不安だ」
「職員向けの具体的な研修を検討したい」

というお悩みがあれば、どうぞお気軽にお問い合わせ(意見交換・簡易診断)ください。